あっという間に夜がきた。
クリスマスだからといって特別なものを用意するでもなく、ただパスタが食べたいという彼の要望に答える彼女はそれらを並べていく。
サラダと温かいスープをつけて盛り付けられたパスタは緑と赤の二種類。いくら気にしない性分だとしてもスーパーはクリスマス気分なわけで、お陰で無意味に華やかだ。
冷めないうちに食べてもらおうとエプロンを外し椅子に掛けていればタイミングよく彼が部屋から出てきた。
眼鏡を外しながらぐっと伸びをしている様子に彼女がふと声を漏らす。
「お疲れ様でした、ご飯です」
「ん、今日もありがとう」
どうやら宣言通りに書き上げたらしく微細ではあるが表情がすっきりしたように見える。
「わ、クリスマスっぽいねパスタ」
「ほうれん草とベーコンのパスタとたらこです」
「うん、旨そう。早く食べよっか冷めちゃうね」
定位置に腰掛けた彼の前に彼女も座るといつものように手を合わせる。いただきます、とどちらからともなく言葉を交わせば空気は軽いものになっていく。
「んー美味しい。なんか沁みるー」
「………よかったです」
「スープも美味しいね。これも作ったの?」
「……はい、そうです」
「コトは素晴らしい奥さんだね、本当に」
「……………」

