‐彼と彼女の恋物語‐




山下あずさとの静かなる論争でいつもなら気づくはずの扉の開閉音に気づけなかった。


はっと、焦りだしても時既に遅しで。コートを脱ぎながら二人の元に近寄ってきた彼は一瞬、眉根をよせるもその表情はすぐに不敵な笑みに変わる。



「楽しそうなことしてんね、君たち」



ニヤリ、綺麗顔が浮かべたそれに彼女は何も言えなくなる。山下あずさはこれからくる何かに怯えたように微動だにしない。


しかしそれは杞憂に終わる。



「たまにはいいことすんじゃん、山下も」



ニヤニヤしながら綺麗な指先で包装されたままの下着を掴む様子さえ絵になる。



「(よかったぁあ!怒られない!)ぜひクリスマスにでもご使用ください!では!」



今までの経験からしてなのか余計な爆弾を踏む前に笑顔で去る準備をする山下あずさ。



「え、あずささん…!」

「(報告待ってます!)お邪魔しましたあ!」



やられた。何だクリスマスって。



その後はただひたすら笑みを浮かべる彼に質問されつづけて、夜になるころにはどっと疲れていた。



なのに。



「期待してるよ、クリスマス」



仕事場に入っていった彼は意味深すぎるそれを残して去っていったのだ。