連れていかれたのは雑誌で見たことがある程の有名ブランド店。カツカツと高い靴音を響かせて店の奥へ向かう山下あずさと引きずられる彼女。


行き先はもちろん。



「さぁ、敬さん好みの下着を!探しましょう!!」



下着売り場だ。まだランジェリーショップに連れていかれるよりはましかもしれないと混乱した思考のなかに飛び込んでくるそれら。


ひらひらとした薄いレースや最早、下着としての意味を成してない形体のものまで様々だ。



呆気にとられている彼女はガチャガチャと漁っていく山下あずさの半歩後ろについて存在を消す。


が。



「やっぱ小音さんは白ですよね、でもなーピンクも捨てがたい…!」



恥ずかしいことに下着と彼女を当て比べてはじっくりと一人論議される始末。



「(……帰りたい)」



うちひしがれたようにとぼとぼ歩けばコーナー端にある一人がけのソファーにたどり着く。



「(…時が過ぎるのを待つしかない…)」



きゃっきゃと高校生並みに一人ではしゃぎながらどばどばと買い入れていく姿は何だか凄く楽しそうで。あまりきつく言うことは出来ない。



若い頃からモデルとして働いてきた山下あずさにとっても、彼女はとても大切な、数少ない友人なのだ。