みゃあー、と甘えるように温もりを求めて胸元に収まる。



「(ああ、どうしよう…)」



足がすくんで、動けない。何をすればいいのかもわからない。頭が痛くなる。



玄関口でしゃがみこんだ彼女はミーヤを抱いたままうつむいた。


パタパタ……。


と、すぐ近くで足音がした。やだやだ、怖い。いっそのことこのまま出ていきたいのに身体が強張って何もできない。ただひたすら目を瞑った。


近づく足音に、唇が震えて、泣きそう。


そんな緊張が走った空気になんとも能天気な声がした。



「小音ちゃん、何してんの?」



独特な煙草の香りが鼻を掠める。覚えのある声に呼ばれたことに驚いてばっとその顔をあげる。



「―――…熊谷さん」

「ん、おはよ」

「……おはようございます」



そこにいたのは、少し眠そうな顔をした熊谷という名の男。野上敬の担当者である。