抱きつくという積極的な行為を初めてする彼女はやはりどこかぎこちなく、本来なら彼の背に回されるはずの細腕は胸の前に納められている。



一瞬だけ驚いた表情を見せた彼は惚けるような笑みを浮かべると小さな身体を包み込んだ。



「買い物帰りにでも行こうか、役所」

「……いつでもいいです」

「うん、ずっと一緒だからね」

「はい」



数秒前まであった見えない壁がいとも簡単に姿を消して今ではもう溶けてしまいそうなくらい身近に感じる。



これが、愛なんだ。きっと。



恋よりも近くて温かい。



二人の、愛物語。



―――……こうして彼と彼女の恋は愛にかわることによって終わりを告げる。



しかし、物語は終わらない。



恋が愛になるならば、二人は幸せにならなければいけない。



二人の物語は


まだまだ終わりそうはない。



end…?