‐彼と彼女の恋物語‐




「ねぇ、コト」



隣に座り肩を抱いたままだった彼の口元が彼女の耳元に寄るのを肌で感じる。微かな息遣いがくすぐったい。



「今のが半年前の事実だよ」

「そうみたいですね」

「うん。ごめんね、いっぱい傷つけて」

「―――――」

「家には記者がいたから帰れなくて、でも電話なんかで言いたくなかったんだ」

「………、」

「一人にして、本当にごめん」



目の前にはひとが座ってるのに彼は何の躊躇もなく彼女の髪にキスをする。恥ずかしいけれど、今は受け入れたい。



「これからは、ずっと一緒」

「―――はい」



彼女の返事に一瞬驚きつつもふわりと微笑みをみせた彼。が、その顔は所在なさげな二人に向けられると怖いくらいの無表情になる。



「もう帰っていいよ、二人とも邪魔だから」



とりあえず彼は今すぐにでもイチャイチャしたいのだ。ついでに言えば早く買い物にも行きたいし久しぶりに彼女の作るご飯も食べたい。


それを察する熊谷さんは眉間に皺を作り顔を歪める。



「あのね、敬。俺だって暇だから来たわけじゃないんだよ。原稿遅れてっから来てんだよ!」