「初めて敬さんに会った日…、ずっと付き合ってた彼にフラれたんです。」
「すっごくショックで、だけど仕事はやらなくちゃだし…。」
「対談の仕事だったんです。敬さんと。」
「もうずーっと、ある女性の自慢話をするんですよ。あからさまに付き合ってる雰囲気を出されて…」
話始める山下あずさに首を捻りながらもなんとか聞き入れ脳内で情報を処理していく。
ついでに彼がどこでも彼女の話をしていたというのは聞き捨てならないので後で調べる必要がありそうだ。
たらたらと紡がれた内容をまとめてみると。つまりは簡単なこと。
彼氏にフラれた山下あずさはたまたま知り合ったイケメン小説家のうざすぎるのろけ話に怒りを覚えた。
彼とその女性は付き合ってるものだと思った山下あずさは、喧嘩でもすればいい。なんて軽い気持ちでたまたま見つけた衣装のネクタイを持ち去ったらしい。
しかし、事は大きくなり。
週刊誌に撮られるわ熱愛報道によって事務所から怒られるわ、挙げ句の果てには結果として迷惑をかけてしまった彼に謝りに行ったら…。
「来んな」「ざけんな」「土下座しとけ」「あーもう、超迷惑」「裁判の準備よろしく」
と、言葉の暴力を受けもう精神的にぼろっぼろ。しかし自分が蒔いた種だから仕方がないと事態の収集にかかろうとしたら。
「コトが消えたんだけど」
暴言と長時間にわたる説教をくらってしまったようだ。
幸い、週刊誌による熱愛報道は両者の否定によって直ぐに忘れ去られたが。肝心な彼女が見つからずに山下あずさは命の危機に怯えながら暮らしていたらしい。
そして今日もびくびく生活していたらいきなり熊谷さんから「早く来い、でないと首飛ぶぞ」という死刑宣告の電話が。

