‐彼と彼女の恋物語‐




ぴたり、彼女の言葉に停止してみせる彼らは恐ろしい形相をして瞳で会話をしている。主に山下あずさが集中的にやられてるみたいに見える。



数秒後、隣に座る彼が彼女の華奢な肩を抱くとそれが合図だ。



「えっと、あの週刊誌に撮られた日…ネクタイ届けに来たの、覚えてますよね」



控えめに声を発した山下あずさが真っ直ぐ見つめる先にいる彼女は一瞬、眉を寄せる。


が、直ぐに無表情にもとれるそれで自分を守る。



「覚えてます」



声色に込められた震えは彼女自身、何に対してのものなのかもわからない。けれども今、声を出さなければ負けてしまうような気がした。



ぎゅっと握った自分の手は爪が食い込んで痛いくらい。そのくらい本気だから、本気で彼と向き合いたいから。黙って次の言葉を待つ。



―――しかし、いくらこちら側が待てども音はない。



そこでふと、思う。



意外と単純だったりして、と。もしかしたら実は彼と山下あずさが血筋だったとか、熊谷さんの妹です、とかで仲がいいだけで実は全く週刊誌と関係ないのかも。



ただの理想なのかもしれないけど、そう思えたおかげで身体が軽くなった気がする。



と。ようやく山下あずさが口を開いた。



「―――彼氏にフラれて…」



そう、事実なんてのは意外と単純なものなのだ。