‐彼と彼女の恋物語‐




「はー、死ぬかと思ったー」



タオル片手にメイクをしてない素顔を晒してリビングに入ってきた山下あずさ。その後ろから少し疲れた表情をしている彼女はため息をついている。



「小音ちゃん大丈夫?ケーキ食べよ!」



只単に自分が食べたいがためにケーキを薦めてくるはた迷惑な熊谷さん。



「……じゃあ、いただきます」

「ねー、食べよー」

「コトはこっちね、隣にきて」

「私ミルフィーユ希望です!」



なぜこんなことになったのだろうかと思案するがケーキひとつを強奪し合う人間をみていればどうでもよくなる。



「コトは何がいい?」

「フルーツがのってるやつがいいです」

「かわいー」



噛み合わない会話すらもう放棄である。


大人4人がテーブルにケーキを並べてわーわー言いながらはしゃいでいるのはなかなか見物である。



「(あ、おいしい)」

「(コトが嬉しそう…)」



徐々に無くなっていくフルーツケーキ。しかしこの状況下でいつまでも食べ続けていればふと考える。



「あの、なんで山下さんがいるんですか」



至極、普通の疑問である。