‐彼と彼女の恋物語‐




ああ、もう頭がいたい。深いため息を思わず溢す彼女にようやく腕の力を弱めるセクハラ小説家。



「山下、とりあえず普通に座れ」

「うううっ…!」



彼に言われるがままにびくびくしながら立ち上がり、ソファーの隅にこじんまりと腰をかけた山下あずさ。


なんかすごく虐められたみたいで、こっちまで悲壮感にかられそうだ。



「これ、どうぞ」

「……ありがとうございますううう!」



とりあえず何かしなければ、とと手近にあったティシュを箱ごと渡すと山下あずさは再び涙を流しながら顔を拭いていく。


そっと隣に腰かけた彼女は荒々しく顔面を擦る山下あずさに若干の引きを覚える。



「あの…そんなに強く擦っちゃ…」

「痛っ…マスカラ!マスカラが目に入った!」

「………(騒がしい)」

「痛い痛い!…睫毛入ってる!」

「あの、顔洗ってきたほうがいいと思います」

「でもコンタクトが…っいた!ちょ、敬さん怒んないでえええ」

「こっち来てください」



話が通じない人類だと判断した彼女は目の前でどんどん顔面を汚していくモデルの手を引いて少し強引に連れ出した。