あの日、非通知でかけた電話をかけたっきり連絡手段は全て遮断した。
「家行ってもいなかったし」
「…………」
「敬にも何も言ってなかったみたいだね」
「ごめ、なさい」
「あったのは“これ”だけ、もう本当に…」
「………ごめんなさい」
“これ”と強調され呈示されたのは文字が羅列した一枚の紙とこの部屋の合鍵。
ちらり、彼が意味ありげに紙を視線の先に捉え小さくため息をつく。思わず肩をびくつかせる彼女。
「ごみの日、物の置場所、洗濯機の使い方、コーヒーの場所、ミーヤの隠れる所。コトは自分のことは一切書かないで出てったよね」
「はい……」
「そうさせちゃったんだよね、ごめん。帰ってきたらコトがいなくてさ、うん」
「…………」
話をしなさすぎたせいでいろんなすれ違いが生じてしまったことは理解している。
「ちゃんと話すよ、二度とコトがいなくならないように」
「はい」
あの週刊誌、彼が帰ってこなかった数日間。やっと聞ける。
息を飲んだ、そのとき。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン!
連続した機械音がしつこいくらいに鳴り響いた。

