それからしばし甘い時間を過ごして10分ほど経過したとき、慌ただしい騒音が無遠慮にも響き渡った。
ダダダダッ…ダッ。リビングに来る途中に転けたらしく、玄関の方からはあぶねッ!なんて声が聞こえた。
そして直ぐに姿を見せたのは黒いコートにマフラーをして両手に紙袋を持った怪しい男。熊谷さんである。
「っ…小音ちゃん!」
「え、わぁ、ちょ」
その熊谷さんはマフラーをもぎ取り床に投げると涙を浮かべながら彼女に向かって両手を伸ばした。
が、そんなことができるはずもなく。
「ざけんな、触ったら金とるぞ」
なんていう脅しと凄みに押しとどまる結果となる。しかし熊谷さんの登場により焦るのはもうひとり。
「…っ(熊谷さんだ、どうしよう、恥ずかしい)」
未だ膝の上に乗せられたままの彼女が咄嗟に腰を引き彼から距離を取る。突然離れたことに力を緩ませてしまった彼は小さく悪態をつく。
「コト」
「あの、えっと」
「おいで」
「……コーヒー、淹れますか?」
「(うっわ、泣きそう!可愛い)…火傷に気を付けてね」
「はい」

