「あ、もーしもーし。熊谷さん」
「いるよー。今ね、膝の上にいるんだけど超可愛い」
「10分以内、じゃないと会わせない」
「知らね、え?あーわかんね。とりあえず全部」
「いーから。どうせあいつも来んなら食わせてやるから」
「はーい、お願いね」
電話口でなにやら物騒なことをにこやかに言って見せる彼は適当且つ強引に通話を終わらせた。
かと思ったらそれをポイッと彼女が座っていたソファーに投げた。
「……熊谷さん、ですか」
「そう。話さなくちゃいけないこと、ちゃんと話してないからね」
「―――――」
「ごめん、長い間一人にさせて」
寂しかった?そう問いかけながら申し訳なさそうに眉を寄せるのを見ていたら、何だか全部どうでもよくなる。
彼さえいれば、なにもいらないとさえ思う。
今朝までは目に見える全ての世界が灰色に見えたのに、今ではもう輝いて見える。ひとを好きになるって、とても不思議だ。
とくん、とくん…。彼から伝わる鼓動にさえ、ときめきを覚える。

