彼はここまで車で来たらしく、手を繋いだまま連れていかれたのは近くのビルの駐車場だ。
高級感のあるフォルムは彼にとても似合ってる。本当に、モデルを本業にしたらどうなるんだろうかと心配すら沸いてくる。
彼はスマートに助手席のドアを開け、座るように促す。踏み込むのが戸惑われるほどのカーペットの上質さに圧倒されて動けない彼女。
その様子に知ってか知らずか、少し強引に押し込むと緊張気味な彼女の頭をポンポンと撫でると自分も運転席へと腰を下ろした。
車内に広がる心地よい香りに無性にどきどきする。
「………(これから何を話せばいいんだろう)」
彼の家に着いたとして、果たしてどのような行動をしていけばよいのかと脳をフル回転させるが結局纏まらずに考えることをやめる。
「大丈夫?直ぐ着くからね」
表情が暗くなる彼女に僅かに焦りを見せる彼が酔ったのではと気を配る。
「………大丈夫です」
「(よかった…)」
お互いになにかを言わなくちゃいけないのはわかっているが、話で解決するのは家に帰ってからだという雰囲気であまり喋らなくなる。
微妙な空気なまま車は20分ほどで懐かしい場所へと帰ってきた。
「……(先生の、家)」

