優子さんのその台詞に無性に胸が高鳴る。ドクン、ドクンと脈打つそれは果たして何に対してのものなのか。
蛍光灯の光が眩しくなっていく。瞬きをすると水が顎まで伝いポタリと優子さんのエプロンにシミを作った。
「(先生には、あの人が)」
思い浮かぶのは綺麗な声と画面上で見た姿。それに二人が寄り添い立つまるで絵のような己の首を絞める想像。
何度も脳内で思い浮かべたそれは消えることを覚えずにこびりついている。
「っ…(苦しいっ…)」
喉が、胸が、心が苦しい。
咄嗟に全身に力がはいる。と、再び耳許で優しい音がする。
「彼がどうとか、相手のことはまず気にしないでいい。小音ちゃん自身のために生きなさい」
ふわっと、浮遊感を感じる胸元にするすると入ってきた言葉。
「あ、たし、自身のために」
どうしてだろう。どこか奥に光を見つけた気がしてくる、答えにたどり着けた気がしてくる。
ふふ、と籠るような笑い声を上げた優子さんは彼女のそれに幾度となく頷くと背中を撫でる。

