手から伝わる温もりが酷いくらいに優しくて優子さんを象徴しているようだった。
一変して口許に笑みを浮かべた優子さんが再び言の葉を紡いでいく。
「何があったのかは、知らないわ」
「―――――」
「それでも、分かる。あの人は小音ちゃんの大事なひとだよね」
「――…っはい」
掠れたように吐息混じりになったそれなのに力強く空気を振動させた。彼女の、彼に対する想いの価値の分だけそれは広がる。
「私は、正直他人の人生なんて他人が決めればいいと思う」
「―――――」
ストレートに発せられる言葉の羅列を一言一句聞き逃さないように真剣に捉えてゆく。
「だけどね、小音ちゃん。あたしは小音ちゃんのこと凄く好きよ、他人じゃない」
「ゆう、こっ…さん」
「小音ちゃんには幸せが似合うと思うから」
「っでも―――」
「小音ちゃんには、彼がいないと。だめでしょ」
幸せになるのなら。と頬を濡らす涙を拭いてくれる優子さんに初めて感じるそれは、親から与えられたことのない、初めての愛情だった。

