恋愛話を始めましょう。


「龍がね、いつも言ってるんだ」


先輩から話を切り出してくれた。

――龍。


「奈波先輩は、いつも1人で頑張ってる。僕にもっと頼ってくれればいいのになー、ってね。あ、これ内緒ね?」

「…はい」


龍、そんな事言ってたんだ…。

頼る、って言われても。


あたしは龍よりも年上だし、年下に頼るなんてかっこ悪いじゃん。

しかも、あたしは実行委員長。
長が頼るなんて、さらにかっこ悪いってあたしは思う…。


でも、龍は前に言ってた。


『でも、あんまり無理しないでくださいね?』
『実行委員長だからって、全部背負わなければいけないってわけじゃないんですから』


あれって、頼ってって意味だったの?

…わかるかよ、バカ。


「弟の言う事をわざわざ聞く必要はないとは思うけどね。でも、木下ちゃんが頼ってくれたら、龍は喜ぶと思うよ?」


いたずらっ子のように笑う先輩。

それを見て、あたしも少しだけ笑ってしまった。


「…そうですね」


なんだろう。
少しだけラクになった気がする。

無意識のうちに、あたしは気を張っていたのかな。


でも、先輩から話を聞いて。
龍に頼ってほしいって思われてる事を知ったから、安心したのかな。


…これが終わったら、龍のところに行こう。


―――ステージ発表が始まった。