「…ホントにごめん、龍。あたしが、ちゃんと前を向いて歩いてなかったから」
「ま、先輩のせいかって問われたら…、そうなりますよね」
「…」
…せっかく謝ってるのに、コイツはまだそんな事を…。
でも、今回はどうやっても言い返せない。
俯くあたしを、…龍は抱きしめてきた。
「え…、ちょ…」
「先輩は、ケガはないですか?」
「え?あ、うん…。あたしは、なんとも…」
「よかった…」
龍が息をついたのがわかった。
「先輩に何かあったら…」
―――何かあったら…?
こんな時なのに、あたしの心臓はドキドキとうるさかった。
…あ。あたし、まだ龍の上に乗ったままだった…!
「ね、龍――」
「痛いので、動かないでください」
「っ…」
そんな事言われたら…、動こうにも動けないじゃん。
龍はあたしを抱きしめたまま動かなかった。
龍の腕の中で、あたしは感じる。
こんなに可愛い顔なのに、こんなに細い身体なのに
力は強い。やっぱり、男の子なんだな。
…そう思うと、急に意識してしまう。
さっきまでは、うざい後輩ってだけだったのに。



