私は、川口くんが好き。
なんて、言えないよ。
でも
花びらを取れたら、言える気がする。
「…見てて、川口くん」
私、取るから。
気合いを入れ直して、再び上を見る。
…私の想いが通じたのかな。
たくさんの花びらが落ちてきた。
これなら、取れる気がする。
私は手を高く上げた。
「……取れたで」
「え」
すっとぼけたような声が、横でした。
…取れたって、まさか?
横を見ると、右手に桜の花びらを乗せた川口くんがいた。
「…え?」
「なんか、手ぇ出したら落ちてきたけど…。結構簡単なんやな」
「ええ!?」
嘘…。
私があんなに頑張っても取れなかったのに、川口くんはそんな簡単に…!?
なんか…悔しい。
けど
「…恋、叶うかもね」
川口くんは、好きな人いるのかな。
…いるらしい。
顔をほんのり赤くして、「おぅ」と小さく返事した。
その返事に、傷ついてる自分がいる。
だって、私と川口くんは《友達》だもんね。
…川口くんが、私の事を好きになってくれるはず、ない…。
だって私は、もしかしたら好きな人より友達を優先させちゃう女かもしれないから。
それは多分、川口くんもわかってる。



