「…ラーメン、すっごい美味しかったよ」
「やろなぁ。橘のあの感想には、めっちゃウケたで」
「…あれは、忘れて」
思いだすだけでも恥ずかしい。
「いや、忘れへん」
川口くんの顔を見る。
…優しい顔。
おじさんの横顔に、似てる気がする。
「…俺な、将来…ラーメン職人になりたいんや。おじさんのように、みんなから愛されるラーメンを、一生作り続ける」
「…川口くんなら、なれるよ」
「そか?オカンには、『アンタには無理や』って、ばっさり切られたで」
思わず笑ってしまう。
川口くんのお母さんを見たわけじゃないけど、その様子が想像できそう。
川口くんは、話を続けてくれた。
「バイトって言ってたけど、本当は修行みたいなもんやねん。『技術は習うより盗め』がおじさんのモットーやから。こっちに来てからずっと、ここで働かせてもらってる」
「…て事は、4年間も?」
「せや。5年目突入」
「すごい…」
努力家なんだな、川口くんは…。
「ラーメン一筋やからなぁ。でも、関西弁使うてると、なぜかたこ焼きってイメージがつけられてまうんよ」
つけちゃうイメージ、わかるな。
関西=たこ焼きって、私の中でのイメージ。
でも、たこ焼きは大阪だよね?
て事は、川口くんは大阪から来たんじゃないのかなぁ。



