「え…」
暁くん、って…、名前で……―――。
…彼の顔も、みるみると赤くなっていく。
それを見て、私の顔もさらに赤らむ。
…私、なんて事を…!
『川口くんの事は、名前で呼んであげな』
柚稀はそう言ってたけど…、言ってたけどさぁ…!!
自分の口から出るなんて、思いもしなかったのに…っ!!
「…たち――」
「暁ーーー!!サボってんなら、給料減らすでーー!!」
店の中から聞こえた、女の人の声。
その途端、赤くなっていた川口くんの顔は青くなった。
「ま、待ちぃや!すまん、橘!中に入っててくれへんか?」
「う、うん…」
とりあえず、川口くんの給料が危ないって事はわかった。
…それもこれも、私のせいだよね……。
今日は、川口くんに迷惑をかけてばかりだなぁ。
でも
川口くんに「中に入ってて」と言われた事は、素直に嬉しかった。
横を見ると、ガラスに映った自分のニヤケ顔。
…いけないいけない。
頬を叩いて気持ちを引き締めて、私は川口くんの店に入った。