…裕也。
あの人、田沢くんを名前で呼んでた…。
「橘ー?」
と、店の中から川口くんが顔を出した。
「どないしたん?」
「…今、田沢くんがいた」
「田沢?誰やそれ」
「え?田沢 裕也…くん」
「…田崎やないそれ?」
「え?」
田崎…。
…だったかも!
そうだ、田崎 裕也くんだ!
私てっきり、田沢くんだと…。
「なっ、なんで笑うのぉ!?」
「ぷぷ…っ。だ、だって、田崎があまりにも不憫で…」
「だって…私、名前覚えるの苦手なんだもん」
「じゃあ、俺の名前は覚えてる?」
「もちろん!川口――」
《暁》…――。
…口に出せなかった。
代わりに、顔が熱くなる。
「…あれ?」
「…もしかして、忘れたん?」
「う、ううん!覚えてるよ!…川口 あ――」
きら、くん…。
「…橘、顔赤いで?」
「そんな事ない!暁くんのばかっ…ぁ」
あ……。
私…、今…?



