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「はぁ…、はぁ…」


川口くんの姿を見失うまいと全力疾走した私は、倒れそうになるくらいに疲れていた。

…でも、おかげで川口くんを見失わずにいれた。


「橘!中、入っててええから!」


走りながら中に入る川口くんに言われた言葉。

それに頷いて、私は歩こうと足を踏み出した。

――その時


「あれ、橘さんじゃーん♪」

!!
この声、どこかで聞いたような、聞かなかったような…。

振り返ると、そこには女連れのチャラ男の姿があった。
確か、同じクラスの…田沢くん?


「ぐうぜーん!こんなところでどーしたの?」


…隣の女の人に、ものすごく睨まれてる。


「ち、ちょっと用事があって…」

「ふーん。あ、この辺に、川口がバイトしてる店あるんだよね~」

「え…」


なんで、田沢くんがそれを…?

川口くんが教えた?それとも…。


「ねー、裕也ぁ。行こうよぉ」

「ん、はいはい。じゃ、またね♪」


田沢くんは投げキッスを私にしてきた。

本能的に、振り払ってしまう。


「あはは、橘さん、面白いね~」

「…どうも」


早く行ってくれないかなぁ。

って思いが通じたのか、女の人と腕を組んで歩いていった。