…また、泣きそうになる。

今度のは、嬉し涙だった。
けど…――


「あーっ!!川口!あたしの麻友になにすんの!?」

「はっ!?」

「アンタさっき、麻友の事叩いたよね!?痛すぎて、泣いちゃったじゃん!!」


と言って、奈波は私を引きよせた。

…えっと、ちが――


「ちゃうわ!!木下と加藤が泣かせたんやろ!?」

「あれ。私たちの名前、知ってたんだ」

「そら、知ってるに決まってるわ!橘のともっ―――」


何かを言いかけて、川口くんは口をおさえる。

…?
何を言おうとしたんだろ?

私の…何?



「……はっは~ん??」


と、奈波の怪しい声が耳元で聞こえた。

それと同時に、私は川口くんのところまで連れて行かれる。


「そんなに言うならしょうがない!麻友、可哀想な川口とデートしてあげなっ」

「でっ…!?」


デート!?

ち、違うよ!川口くんは、今からバイトで…――

…って、奈波もう行っちゃった…。


助けを求めるように、私は柚稀に目を向ける。


でも、柚稀も奈波と同じような目をして


「川口くんの事は、名前で呼んであげな」

「…名前?」

「おい、加藤!?」

「これからも、うちの麻友ちゃんをよろしくお願いします」


…お母さんみたい。

てか、それはどういう意味だろう?