川口くんのバイト先は、学校の最寄駅から2つ目の駅。
徒歩5分の場所だって。学校で教えてくれなかったわりには詳しく話してくれた。
「あ、ねえねえ。ちょっと気になってたんだけど」
「ん、なんや?」
「川口くんって関西弁だけど、こっちには越してきたの?」
「せや。中1ん時に」
「へぇーっ。…こっちに来る時って、不安にならなかったの?」
「不安には、ならなかったなぁ。俺、友達作るの得意やから」
「そうなんだ…」
じゃあ、人見知りはしないんだ。
いいなぁ…。
だから、初めて会った時に堂々と知らない人と話せたんだ。
…話せたっていうか、お説教?
「なんや、暗い顔して」
「えっ?あ、いや…。私も、川口くんみたいになりたいなぁって思って…」
「…俺みたいに?」
「うん。…私、根っからの人見知りで…。他人と話すのが苦手なんだ。もし私が人見知りじゃなかったら…、迷惑かけないでいられるのにな…」
「迷惑?」
「私の友達…、柚稀と奈波に」
私が人見知りのせいで、私が知らない人に話しかけられた時には2人がフォローを入れてくれる。
なぜだかわからないけど、私は知らない人に話しかけられる事が多い。
大半は、男の人。
しかも、私の苦手なチャラチャラした人。
…本当は2人も、迷惑してるんじゃないかって思ってる。
―――私と友達でいることが面倒になったりするんじゃないかって思ってる。
中学の時の記憶が蘇る。
『麻友って、メンドクサイ』
やだ…、行かないで…。
1人にしないで…!!



