―――次の日。

教室に入ると同時に、私は川口くんを探し始める。


…名字が《か》って事は、前の方の席だよね。


「あ」


目があった。

間違いない、川口くんだ。


「川口くんっ、お…、おはよ」


男子に挨拶なんてできない私は、勇気を振り絞って言った。


「……ん、おはよ」


よかった、返事してくれた…。

それだけで、単純な私は嬉しくなる。

笑顔で川口くんを見てみた。


…また、背けられた……。


「おっはよー、橘さんっ♪」


いきなり声をかけられて、思わず身構える。

後ろを振り向くと、そこには同じクラスだと思われる男子の笑顔があった。


「川口と何話してんの〜?俺も混ぜてよ!」


え…。
なんでこの人、私の肩に手を回してるの!?

俗に言う、チャラ男?
やだ…。私、こういう人が一番嫌いなのに…。


「…おい、田崎。嫌がってるやろ」

「ん?なんだよ、川口。橘さんを一人占めしようってか?」

「そんなんちゃうわ!ほれ見ろ!橘の、この嫌そうな顔!」


えっ!?私、そんなに顔に出てたのかな!?

川口くんのおかげだろうか、田崎と呼ばれた男子は「ふーん」と言って離してくれた。
そして、笑顔で私に向き合う。


「俺、田崎 裕也。これから1年間よろしく、橘さん♪」

「あ…、うん」


返事をすると田崎くんはにっこりと笑い、他の女子のところに向かっていった。

…やっぱり、そういう人なんだ。