曖昧な返事をすると、川口くんはこっちを向いた。


「~~!同じクラスの川口 暁や!覚えとけ!!」

「川口…暁くん?」

「!!」


あれ…。
また背けられちゃった…。

…同じクラスの、川口 暁くんかぁ。
クラス替えしたばかりだから、まだ覚えられないんだよね。

柚稀と奈波が同じクラスだったのが幸いだった。


私は、根っからの人見知り。

柚稀や奈波と友達になれたのも、2人が話しかけてくれたおかげだった。


…そのせいもあるからかな、人の顔と名前を覚えるのも苦手だった。


川口 暁くん。

助けてもらったんだし、覚えたい。

顔も覚えたいのに。

そっちを向いていたら、見えないのになぁ…。



――桜の花びらが、私たちの間を舞っていった。