「お前、橘 麻友やろ?」

「えっ?あ、はい」


なんで私の名前知ってるんだろう。

きょとんとしながら彼を見つめていると、彼は顔を赤くした。


「みっ、見んな!」

「えっ?あ、すいません…」


な、なんだろう。

とりあえず、私は言われた通りに彼を見ないで、今度は線路から離れた場所で桜を眺めた。


…沈黙。

そういえば、この人の家はどこなんだろう?
なんで私の名前を知っているんだろう?

聞いてみたいけど、聞いたら怒られそうだなぁ…。


「…なぁ」

「はいっ?」

「…自分、俺のこと知らへんの?」

「私が?あなたのこと?」


…どこかで会った事あったのかな。
顔をよく見れば、思い出すかなぁ…。

私は彼の顔をじっと見つめる。


「…えっと?」

「…!!」


彼は顔を赤く染めて、顔を背けてしまった。

顔を背けられたら見えないのに…。


「あのー…」

「川口や!!」


か…わぐち?


「はぁ…」


誰だろう…?
私、川口なんて知り合い、いないはずなのに。