「…なんか、ごめんな。いきなりこんな話をして」
「いえ…」
玲奈さんの姿がもう見えない。もう帰っちゃったのかな。
「さっき玲奈に…あ、あいつの本名は正雄っていうんだけど、そう呼ぶと怒るから。あいつに説教されたんだ。自分の気持ちを伝えないで、柚稀ちゃんを泣かすお前は最悪ヘタレ男だって」
玲奈さん、あんな顔してけっこうキツく言うんだなぁ。
まぁ、元は男の人だもんね。それが普通なのかな。
「…玲奈に言われたから。って言うとダサいけど、ちゃんと伝える」
「……はい」
「俺…、ずっと柚稀ちゃんが好きだった。初めてバイトに来た時から…。いや、前に一度、客として来た時からずっと」
「え…」
あんな前から…?
朝倉さんが、ずっと私を…?
「遊びに誘ってくれた時は、叫びたくなるくらい嬉しかったし、家まで送っていった時の理由だって、ただの口実だし…。俺は柚稀ちゃんより年上だから、余裕を持たなきゃって思ってたんだ」
…泣きそう。
さっきとは違う意味で、涙が出そう。
朝倉さんが、そんな事を考えていたなんて。
私が想うよりも前から、私の事を想っててくれていたなんて。
…目の前の真っ赤な顔が、すごく愛おしい。
「…こんな俺だけど…、一緒にいてくれますか?」
…そんな質問に、答えは決まっている。
「……私も、朝倉さんが好きです。ずっと、朝倉さんは玲奈さんと付き合ってるって思ってて、朝倉さんへの想いが苦しいって感じてました。でも…。朝倉さんの気持ちが聞けて、今ではすごく幸せな気分です」
「……そ、っか。よかった…」
私の返事に、朝倉さんは満面の笑顔を見せてくれた。
私も、満面の笑顔を朝倉さんに向けた。
―――そんな私たちを、今年の初雪が祝うように優しく舞い落ちてきた。
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いやぁ、やっぱりこういうのは照れるね。
ちなみに、玲奈さんとは今でも仲良くしてもらってます♪
…ほら、今度は麻友の番だよ?
あぁ、奈波のは最後のトリって事で、とっといてあげな。
麻友のこういう話は、なかなか聞けないんだから。
「――あんまり、期待しないでね?」



