「あっ…」


制服に着替えて更衣室を出ると、そこには髪をピンで留めている朝倉さんがいた。



「あ。柚稀ちゃん。こんにちは」

「こ…こんにちは」


いつも、朝倉さんとシフトが重なる。

私がそんなシフトの入れ方してるから、仕方ない事だけど…。

…本来なら嬉しいはずなのに……、泣きそうになる。


朝倉さんの隣に玲奈さんの姿が見える気がして――。


「最近、ほぼ毎日来てるらしいね。調子、大丈夫なの?」

「はい、なんとか…」


ぺこりとお辞儀をして、私は俯いたまま朝倉さんの横を通りすぎる。

……その途端に、強い力で腕を引かれた。


「!?」


近くには、朝倉さんの顔。
悲しそうな目で私を見つめている。


「こんな事聞きたくないけど。…俺のこと、避けてる?」

「え…っ?」


目の前が一瞬、真っ暗になった気がした。

朝倉さんは、私の態度に…朝倉さんの事を避けてるって気づいてる。それは、私にだってわかっていた。

けど、朝倉さんは口には出さない。
なんとなくだけど、そう思っていた。けど……。


…何か、言わなきゃ。

でも
口が、声が、言うことをきかなかった。


「あ…」


あれ…?

目の前がぼやけてる。


…私の頬を、温かい何かが通っていった。