振り返ると、玲奈さんと親しげに話す朝倉さんの姿。

…2人の会話が聞こえる。


「珍しいじゃん、幸也がゲームセンターなんて」

「ちょっと遊んでたんだよ」

「へぇ〜。誰?」


玲奈さんがこっちを見た。

とりあえず会釈をする。

…わぁっ。笑うとさらに綺麗!

そんな人が、朝倉さんの近くにいたんだ…。


「バイトの後輩」

「ふぅん?あ。幸也さぁ、講義室にこれ、忘れて行ったでしょ」

「あ。教科書。ないと思ってたんだけど講義室にあったんだ」

「どんくさいね〜」


玲奈さんは朝倉さんの肩を叩く。


「いってぇなぁ」

「何よ。このくらいで痛いなんて、軟弱ねぇ」

「お前に言われたくねぇよ」


朝倉さんは笑っていた。
玲奈さんと笑い合いながら、楽しそうに話している。


…私は、その光景を遠くから見つめるだけ。



―――しばらく話をした後、玲奈さんは笑顔で去って行った。


「ごめんね、柚稀ちゃん」

「いえ、大丈夫です。…あの人は?」

「あぁ。…大学の同級生」

「そうなんですか…。綺麗な人ですね…」


…私、変。
さっきまでの楽しい気持ちは、どこに行ったの?


…玲奈さんに、嫉妬している自分がいる。

わかってるよ。
朝倉さんと過ごした時間は、私なんかよりも多いって事。

でも、なんだろう…。悲しい。

私の知らない朝倉さんがいるって思うと、胸のあたりが痛い。


「…柚稀ちゃん?」

「あ、すいません。次、何しましょうか?」


危ない危ない。
朝倉さんに心配かけちゃ、ダメだよね。

私はいつも通りの笑顔を向けた。

…けど。
私今、ちゃんと笑えてる――?