『――今日は星が綺麗ですね。』
会社を出たら、池波くんが突然そんな事を言う。
何を言い出す、君は。
本当に、池波くんの行動意図が分からない。
分かったためしなんて無いけど。
『何ですか、そんなににらんで。俺、そんなに場違いな事言いました?』
「いや…ただ、意外だっただけ。」
少し、ジト目で見つめていたのを気付かれて、パッとそらす。
そうだった、
そう言えばコイツ、妙に周りのことに敏感な奴だった…。
「星、好きなの?」
『まぁ、綺麗だとは思いますけど…そんなには。』
「プっ、何ソレ。」
意味分かんない。
じゃぁ、何で“星が綺麗”なんて言ったんだか。
『星の名前とか、知りませんよ。でも…こうやって、顔を上げて、綺麗な星を眺めるのは好きですね。』
「…ふーん」
実際に、顔を挙げて星を眺める池波くん。
その横顔が、格好良くて、不覚にも胸が高鳴った。

