『そんなこと…言わないでください。』
「え?」
『とにかく、一緒に帰りましょう。茉子さん。』
「っ……!!」
いま、何て――…
私の名を呼んだ池波君にその真意を問い詰める前に、彼は自分のデスクへと戻っていった。
良かった、社内に誰もいなくて――。
こんなとこを誰かに見られたら、明日どうなる事か――…。
こんなときでも、周りを気にする私だった。
「――終わった…。」
ファイルを保存して、トップ画面に戻り、シャットダウンする私に襲ってくる眠気。
もう9時かー。
もう帰るのさえ面倒くさいなー…。
いっそここに泊るか、とあくびをしていると――…
ピトッ
『お疲れ様です。』
「ふぁあっ!?」
冷たい缶コーヒーが頬にあてられた事によって、眠気は一気に飛んで行った。

