好き。

初めて芽生えた感情だった。

物心ついた頃から周りには格好良いとはやしたてられ、何もしなくても誰もが俺に寄って来た。

そんな中、唯一俺に興味を示さなかった女。

――それが、茉子先輩だった。


始めは、可愛くない女だと思った。

だけど、…俺に仕事を教えてくれたのは彼女だった。

彼女は、差別しなかったんだ。

俺と俺の同僚を。


他の人が俺だけを優遇していた中、茉子先輩だけが――…俺を一人の後輩として見てくれた。


それに気づいてからは、もう彼女を好きになるのに時間なんて関係なかった。

いつでも彼女を目に負っている自分がいて、

いつでも、どうやったら自分を一人の男とみてくれるのか考えて。


でも結局、茉子先輩との距離を埋められないまま過ぎた1年…――


やっと、チャンスが来た。


それが、引越し。

偶然にも、俺が引っ越したところの隣には、茉子先輩が住んでいた。


これで茉子先輩に近付けると思ったのに――…


早速ドジって、ボロボロにフられてしまったのだ。