「っ…クソ…!!」


残されたレストランで、俺は顔を歪ませた。

緩やかなクラシックが流れる店内で、俺だけは不釣り合いだった。


「どうして…」


さっき、茉子先輩にフられた。

そりゃもう、ボロボロに。


俺の好きだった茉子先輩が、本当は偽りの姿だったなんて知った俺はマジでショック。

去って行った茉子先輩を追いかける気力なんてない。


「どうすればいいんだよ…?」


俺は中々強情らしい。

どうしても、会社での茉子先輩がズべて偽りなんて、思えなかった。

挨拶すれば返ってくるあの笑顔も、池波くんと優しく呼んでくれるその声も、恥ずかしい時には髪を耳にかけるその仕草も――

俺には嘘だなんて、思えなかったんだ――…。