『じゃぁ…俺に仕事を一から教えてくれたことも…心の中では面倒だって思ってたってことですか?』

「・・・。」


それは…。


『仕事でミスして、励ましてくれたあの時も、いつも挨拶してくれるあの笑顔も…全部嘘だったってことですか!?』

「……そうよ。」


無理矢理、白のモノを黒に塗りつぶす。

私はまだ知らなかった。

彼を傷つけずに、私から遠ざける方法を――。


「君の知っている私は全部、偽りなの。」

『っ・・・』

「少しでも好きって思ってくれて、ありがとね。」

『先輩…っ!』


財布の中にあった所持金を全てテーブルの上に置いて、私はレストランを後にした。

ホテルを出ても…池波くんは追ってこず、私はタクシーを拾って家に帰ったのだった――…。