『隣が先輩で良かったです。俺、一人暮らし初めてで。』
「そう…。ごめん、私用事あるから。」
また私は嘘を突く。
会社の後輩に弱みは見せたくないから、このこと誰にも言わないで、とかそういったみみっちいことは言わない。
そんなこと行ったら、余計にこのことを言われる可能性だってあるし。
これは相手の出方を見た方が良いと判断した私は、取り敢えず引き下がる。
『あ、すみません。この話はまた今度…。じゃぁ。』
「うん。一人暮らし頑張れ。」
先輩らしい一言を言って、玄関を閉めた。
「はぁ…。」
手元に残る紙袋。
中身は、高級のチョコ―レートの詰め合わせだった。
本当に池波くんって…センスいいよね…。
そんなことを想いながら、紙袋をダイニングに置いてベッドにもぐる。
「あーもう…どうしよう…」
知られた。
みられた。
池波くんに、私のダメなとこ、ほぼ全部。
これから、私が大嫌いな面倒事が起きることは目に見えていた。
だって知られたのは会社で人気者の後輩で。
池波くんが少しでも口を滑らせれば、次の日には会社全員に知れ渡ってしまう。
彼は大きな影響力も持っているのだ。

