『早く行った方が良いですよ?』


そう言ったのは彼じゃなくて、横やりを入れた後輩の方。

こういうのは、すぐに身を引いた方が楽なのは分かっている。


「ん、すぐ行く。…悪いんだけど白川さん、池波くんにこれのやり方、教えてあげて?」

『はい!』

「よろしく。」

『あ――っ』

『池波君っ!もう、水臭いなぁ~!これくらい私でも――』


だから、私は後輩に池波くんを預けて、課長の元へ向かった。


「――課長。」

『ぉお、もう頼んだやつ終わったのか?』


今流行りらしい伊達眼鏡をかけている課長。

もう中年でファッションを気にするより、メタ簿を気にした方が良いと思う。


「私のこと、呼び付けましたか?」

『は?…いや、呼んでないが…――』

「ですよね。失礼しました。」

『ぁ、ああ…?』


状況が分かっていない課長に頭を下げて、私はさっさと自分のデスクに戻った。