溺愛男子

*琉side*



 俺は聞いちゃいけないことを聞いたらしい。




 肩を上げて少し震えてる杏里。





 親父さんと何かあったみたいだ。





「…理事長と仲良くな」

「…うん」



 歩きながら杏里をたまに見る。




 長い茶髪が揺れている。




「ここでいいよ」

「…何いってんの」

「琉の家はあっちでしょ」



 俺の家の方向を指さす。




 そうだけど…。




「…送る」

「いいよ。悪いし」

「…じゃあ傘貸すから」




 俺にまで遠慮することねぇのに、渡した傘さえ俺に押しつけて戻す。




 風邪ひいたらどうするんだよ…。