溺愛男子


 ちゃんと傘を持ってきていた琉に入れてもらった。




「あーあ…だいぶ濡れたな…」

「大丈夫だよ」

「言えば迎えに行くのに」

「そんなのいいよー」




 髪と真新しい制服に着いた雫を軽く払う琉。




 私より20cmくらい違う身長だから私は見上げることしか出来ない。





「ん? どうした?」

「あのね、理事長おじいちゃんだった」

「は?」

「この学校の理事長…私のおじいちゃんだったの」

「マジかよ」



 驚いた顔で未だに私の髪の雨を拭く。



「琉には話してなかったんだけどね。私、お母さんもいないし、おばあちゃんもこの前亡くなったんだ…」

「…親父さんは?」




 反射的にビクッと上がった肩。




 それに琉は気付いたのか、頭をポンポンと叩いて「やっぱいいや」と言う。