溺愛男子


「今日の学校は楽しかった?」



 とても楽しいなんて言える日じゃなかったけど…。




 心配をかけるわけにはいかない。




「はい、楽しかったです」

「そうか…。良かった。華(はな)が亡くなった今、隠す必要もないから話すが…」



 華とはおばあちゃんのことだ。




 名前を呼ぶくらい親しい中だったのか。





 そう言えば…お葬式で見た気もする。





「華と私はもともと夫婦でな…だから杏里ちゃん、君の祖父なんだよ。私は」

「え…」

「仕事とかの両立が上手く出来なかった私に、離婚を決断せざる得なかったんだ。君のお母さんを残して家を出た」



 私に…ちゃんとした身内はいたんだ。




 それが何だか嬉しかった。




 お母さんのお父さん……。



「おじいちゃん…」

「そうだよ。君のおじいちゃんだ」




 今日はそれが話したかったと理事長は言う。