荷物は手で持てるくらいしかなかったから、お金はそんなに掛からなかった。




 だけど、ここも見つかってしまうだろう。






 たぶんあの男は私を探す。






 自分が働くのが嫌だから。





 
「…中は結構キレイ…」




 大家さんに挨拶をして部屋に案内してもらった。





 部屋自体は狭いけど、住めないことはない。






 前のアパートに比べたら自由があり過ぎるくらいだった。





 私の居場所と言ったらいつも蹴られる部屋の隅くらい。





「…始まるんだ」



 もう、蹴られないんだ。



 殴られないんだ…。