溺愛男子


 開けて飲んでもやっぱり苦かった。



「…無理して飲むなって」

「いーの!」

「またむせても知らないからな」



 飲めるようになりたかった。





 コーヒーを飲めるようになったら少しは大人っぽく見えるかなとか。




 苦いもの、マズイものが飲めるようになる=大人になる





 みたいな式が私の頭の中にあった。




 それに琉ばかりおいしそうに飲んで…。



「ズルイ」

「は?」



 今度はこっちに目線を送らず書類に目を落としたまま返事をする琉。




「こんなのおいしいの?」

「…何いってんの」

「私も飲めるようになりたい~! 琉ばっかり大人っぽいの嫌だ~」




 私がそう言うと琉と担当のスタッフさんが同時に吹いた。



「え!?」

「何言ってんだよ…。静かにしてて」

「…はーい」