「服は?」

「その鞄の中」



 は…?




 指を指す方向に小さなバックが1つ。




「見てもいいよ」



 そう言われて中を開けると、Tシャツ2枚とジーンズ2本。



 あとは歯ブラシとタオルが2枚と通帳と印鑑。



「これだけ…?」

「うん」

「…おま……ムリだろ、これ…」

「必要なのは明日買うよ!」

「何が必要なんだよ」



 こいつ…分かってんの?




 どんどん俺の中での危なっかしさが上がってきてる。





「えーっとね、トイレットペーパーとペンでしょ? 下着と…ってそれくらい?」

「…わかってねぇ……。今、真冬だぞ? なんだよTシャツ2枚って! 防寒具は? ケータイは?」

「あ、それもいるね~」



 能天気に笑う杏里。




 駄目だ、こいつ。




 今、危なっかしさがMAXを超えた。