「…杏里―」

「待って―」




 高校も卒業して俺と杏里は同じ大学に入った。




 毎日忙しくて慣れるのにもだいぶ時間がかかった。





「…お父さん」




 杏里はあの大嫌いだった父親を「お父さん」と呼ぶようになった。





 たぶん心のどこかでは嫌ってるけど。





 もうその愚痴さえ、文句さえ言えない人となってしまった杏里の父親。





 久しぶりに来た杏里の地元。





 何がどう変わったとかは全く分からないけど、前来た時よりもずいぶん光り輝いてた。




「…もうすぐね、琉と結婚するんだよ」