「杏の好きな人は俺?」

「―――そう、だよ」

「じゃあ話を聞いて」

「フラれるの分かってる。だから、もう解放して…」



 寂しそうな顔で笑う杏を放っておけるわけないだろ?




 俺の気持ちを少しは理解して。






 俺は伝えようと必死で、杏は耳を塞ごうとするのに必死。





「杏里…30秒だけ耳傾けてくれねぇ?」

「………10秒」

「ん、いいよ」




 耳に置いていた手を離すとこっちを見る。




「10、9…」

「もう始まってんの!?」

「うん。6、5…」

「えぇぇ………あ、杏! 杏里、好き……」

「2………え?」