「杏ッ!!! 杏里、ちょっと開けて!!」



 チャイムを押しながら大きな声で言う。




 周りに迷惑とか今はどうでもよくて。





 目が真っ赤に腫れた杏が出てくると同時に抱きしめた。





「琉……? 琉、なの?」



 俺に抱きしめられる杏。




 顔が見えないからか、誰かわからないみたいだ。





「…誰かわからない?」

「琉…でしょ。夢じゃじゃないよね…?」





 ぎゅっと力を強める。



「杏……」

「琉、苦しいよ…。それに…勘違いされちゃう」

「…誰に」




 杏の顔を覗きこむと小さな唇にキスを落とす。




「ひゃぁッ…」

「誰に勘違いされるの?」

「琉の好きな、人…」

「…勘違いされていいよ」




 勘違いして。