溺愛男子

 *杏里side*




 伝わってきてた。



 皐月がこれを最後にしようって言うことも。





 皐月が私から離れようともがいてたのも。





 私は正直、皐月がいなくても何ともなかった。





 琉がいたから。




 琉と出会うまでも特に需要性は感じてなかったし。




 だけどね、今は涙が止まらない。





 手に握りしめてた連絡先も涙で滲んで文字も読めなくなりそう。




「――――皐月…」




 思ったより皐月の存在は大きくて。




 琉ほど私の中を埋め尽くす人はいないと思ったけど…。




 今日だけは皐月が一番になってしまう。





 明日からちゃんと戻すから。