溺愛男子


 きっと俺はすごく弱くて。



 二人の隙間に入る勇気なんかない。




 ここにいる杏里は俺と付き合ってた頃の幼さも辛そうな笑顔もなくて、全部変わってた。





 マンションに消えていった杏里を見送る。





 これが最後とか、全部の気持ちは思ったより俺を苦しめた。





「…杏、里…ッ」



 杏里は俺がいなくてもこれまでやってこれた。




 俺には無理だった。




 杏里は俺を必要としていないのに、俺が執着しているから。





 俺しか涙を流すものはいないだろう?




 一つの窓に灯りがついてもその場を離れられない。





「…なんで手放したんだろう……」





 まさかその言葉を聞いてるやつがいたとも思わずに、その場にしゃがみ込む。