「俺のコト好きにさせて見せるから」

「……あのね、皐月」




 ずいぶんと立派なマンションの前で立ちすくむ俺ら。





 月明かりだけが頼りで杏里の顔は少ししかわからないけど、真剣な目つきをしてる。





「私ももちろん皐月が好きだよ。でも、さっきも言った通り…私はやっぱり琉がいい」

「別れたんだよ…?」

「うん。振り向いてとか、そういうのじゃなくて。琉を好きでいたいの」




 杏里はいつからこんなに大人っぽくなって、自分の考えを持つようになったのだろうか。




 昔は本当に無知で純粋で、曇りなんか何もない女の子だった。





 今も純粋だし、曇りなんてないけど…確実に強くなってる。





「琉が私を好きでなくても、傍にいてくれなくても…私は琉を見ていたいの」

「……ははッ(笑)杏里、ずいぶんと成長したんだね」

「そうかな」

「…そういう女の子、すごく魅力的だと思うよ」



 掴んでいた手をこっちに引っ張る。